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3. 予習資料

当日に向けて Siv3D や C++ プログラミングへの理解を深めるための予習資料を用意しました。必須ではありませんが、目を通しておくことをおすすめします。

3.1 基本のサンプル

Siv3D プロジェクトを作成すると、最初に次のようなサンプルが用意されています。

このサンプルを通して、次のような Siv3D の機能を体験できます。

  • 背景色を変更する
  • 画像ファイルを読み込んで描画する
  • 図形を描画する
  • 文章を表示する
  • ボタンやチェックボックス、スライダーを表示する
  • キーボード入力を受け取る(LeftRight でプレイヤー 🦖 が移動します)

3.2 サンプルを改造する

サンプルコード
# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	// 背景の色を設定する | Set the background color
	Scene::SetBackground(ColorF{ 0.6, 0.8, 0.7 }); // (1)!

	// 画像ファイルからテクスチャを作成する | Create a texture from an image file
	const Texture texture{ U"example/windmill.png" };

	// 絵文字からテクスチャを作成する | Create a texture from an emoji
	const Texture emoji{ U"🦖"_emoji }; // (2)!

	// 太文字のフォントを作成する | Create a bold font with MSDF method
	const Font font{ FontMethod::MSDF, 48, Typeface::Bold };

	// テキストに含まれる絵文字のためのフォントを作成し、font に追加する | Create a font for emojis in text and add it to font as a fallback
	const Font emojiFont{ 48, Typeface::ColorEmoji };
	font.addFallback(emojiFont);

	// ボタンを押した回数 | Number of button presses
	int32 count = 0;

	// チェックボックスの状態 | Checkbox state
	bool checked = false;

	// プレイヤーの移動スピード | Player's movement speed
	double speed = 200.0;

	// プレイヤーの X 座標 | Player's X position
	double playerPosX = 400;

	// プレイヤーが右を向いているか | Whether player is facing right
	bool isPlayerFacingRight = true;

	while (System::Update())
	{
		// テクスチャを描く | Draw the texture
		texture.draw(20, 20); // (3)!

		// テキストを描く | Draw text
		font(U"Hello, Siv3D!🎮").draw(64, Vec2{ 20, 340 }, ColorF{ 0.2, 0.4, 0.8 }); // (4)!

		// 指定した範囲内にテキストを描く | Draw text within a specified area
		font(U"Siv3D (シブスリーディー) は、ゲームやアプリを楽しく簡単な C++ コードで開発できるフレームワークです。")
			.draw(18, Rect{ 20, 430, 480, 200 }, Palette::Black);

		// 長方形を描く | Draw a rectangle
		Rect{ 540, 20, 80, 80 }.draw();

		// 角丸長方形を描く | Draw a rounded rectangle
		RoundRect{ 680, 20, 80, 200, 20 }.draw(ColorF{ 0.0, 0.4, 0.6 });

		// 円を描く | Draw a circle
		Circle{ 580, 180, 40 }.draw(Palette::Seagreen);

		// 矢印を描く | Draw an arrow
		Line{ 540, 330, 760, 260 }.drawArrow(8, SizeF{ 20, 20 }, ColorF{ 0.4 });

		// 半透明の円を描く | Draw a semi-transparent circle
		Circle{ Cursor::Pos(), 40 }.draw(ColorF{ 1.0, 0.0, 0.0, 0.5 }); // (5)!

		// ボタン | Button
		if (SimpleGUI::Button(U"count: {}"_fmt(count), Vec2{ 520, 370 }, 120, (checked == false)))
		{
			// カウントを増やす | Increase the count
			++count;
		}

		// チェックボックス | Checkbox
		SimpleGUI::CheckBox(checked, U"Lock \U000F033E", Vec2{ 660, 370 }, 120);

		// スライダー | Slider
		SimpleGUI::Slider(U"speed: {:.1f}"_fmt(speed), speed, 100, 400, Vec2{ 520, 420 }, 140, 120);

		// 左キーが押されていたら | If left key is pressed
		if (KeyLeft.pressed()) // (6)!
		{
			// プレイヤーが左に移動する | Player moves left
			playerPosX = Max((playerPosX - speed * Scene::DeltaTime()), 60.0);
			isPlayerFacingRight = false;
		}

		// 右キーが押されていたら | If right key is pressed
		if (KeyRight.pressed()) // (7)!
		{
			// プレイヤーが右に移動する | Player moves right
			playerPosX = Min((playerPosX + speed * Scene::DeltaTime()), 740.0);
			isPlayerFacingRight = true;
		}

		// プレイヤーを描く | Draw the player
		emoji.scaled(0.75).mirrored(isPlayerFacingRight).drawAt(playerPosX, 540); // (8)!
	}
}
  1. (R, G, B) = (0.6, 0.8, 0.7) でシーンの背景色を設定しています。数字を 0.0~1.0 の範囲で変更して、背景色を変えてみましょう。
  2. 絵文字データをロードしています。🦖 を 🐕 や 🐧, 🍔 に変えてみましょう。絵文字の前後に余分な空白を挿入しないよう気を付けてください。
  3. 画像ファイルから作成したテクスチャを、画面上の位置 (x, y) = (20, 20) に描画しています。数字を変えて、描かれる位置を変更してみましょう。
  4. 「Hello, Siv3D!🎮」という文章を画面に表示しています。文章を書き換えてみましょう。.draw() の中の 64 は文字の大きさです。小さくしたり大きくしたりしてみましょう。
  5. マウスカーソルに追随する円を、半径 40 ピクセル、色 (R, G, B, 不透明度) = (1.0, 0.0, 0.0, 0.5) で描いています。円の半径や色、不透明度を変更してみましょう。
  6. Left が押されていたらプレイヤーが左に移動するようにしています。KeyLeftKeyA に変えて、A キーでプレイヤーを動かしてみましょう。
  7. Right が押されていたらプレイヤーが右に移動するようにしています。KeyRightKeyD に変えて、D キーでプレイヤーを動かしてみましょう。
  8. .scaled(0.75) で絵文字のサイズを 75% に縮小しています。数字を変えて、絵文字のサイズを変更してみましょう。

上記のサンプルコードをクリックで展開すると、8 箇所に (+) マークがあります。クリックしてカスタマイズできる要素を見つけ、手元の Siv3D プログラムの改造に挑戦しましょう。

Visual Studio や Xcode で変更したコードをビルドするとき、以前のプログラムが実行中のままだと、ビルドに失敗します。実行中の Siv3D プログラムを終了するには、ウィンドウを閉じるか、Esc を押します。

予習チェックリスト

  • Siv3D プログラムを変更し、実行する方法を理解した
  • 背景の色を変更できた
  • 絵文字を変更できた
  • 画像が表示される位置を変更できた
  • 文章を変更できた
  • 円の半径や色、不透明度を変更できた
  • プレイヤー(恐竜)の操作に使うキーを変更できた
  • 絵文字のサイズを変更できた

3.3 Main() 関数とメインループ

<Siv3D.hpp> ヘッダをインクルードするだけで、Siv3D の関数やクラスを使ったプログラムを書けます。<iostream><vector> などの C++ 標準ライブラリのインクルードは不要です。Siv3D のプログラムでは、std::string の代わりに String, std::vector の代わりに Array のような Siv3D の型を使うことが推奨されます。

Siv3D のプログラムでは、int main() ではなく void Main() という関数をメイン関数として使います。

while (System::Update()) { } というループがメインループです。メインループは、プログラムを実行しているパソコンのモニタ 🖥️ の表示周期(リフレッシュレート)に合わせて繰り返されます。一般に毎秒 60 回や 120 回です。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update()) // System::Update() が false を返すまで繰り返す
	{

	}
}

System::Update() 関数は普段は true を返すため、半永久的にメインループが続きますが、ウィンドウを閉じたり Esc を押したりするなど特定の操作をすると、それ以降は false を返すことでメインループを終了させ、そのまま Main() 関数の終端まで到達するとプログラムが終了します。

予習チェックリスト

  • Siv3D の基本的なプログラムでは <Siv3D.hpp> のみをインクルードすることを学んだ
  • Siv3D プログラムのメイン関数が int main() ではなく void Main() であることを学んだ
  • System::Update() がメインループの更新頻度を制御していることを学んだ
  • System::Update() の戻り値が false になるとアプリケーションが終了することを学んだ

3.4 Print と ClearPrint()

Print を使うと、画面にテキスト(文字列)や数値を簡易表示できます。Siv3D で文字列を扱うときは、ダブルクォーテーションの前に U を付けます。これは、文字列を Unicode (UTF-32) 文字列として扱うための C++ の記法です。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Print << U"C++";

	Print << U"Hello, " << U"Siv3D"; // 複数に分けることもできる

	Print << 123;

	Print << 4.567;

	while (System::Update())
	{

	}
}

ClearPrint() を使うと、画面に残っている簡易表示をすべて消去できます。メインループの先頭で常に ClearPrint() することで、現在のフレーム内で出力した内容だけを画面に表示することができます。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	int32 count = 0;

	while (System::Update())
	{
		// 古い出力(以前のフレームの出力)を消去する
		ClearPrint();

		Print << count;

		++count;
	}
}

予習チェックリスト

  • Print を使って画面に文字列や数値を簡易表示する方法を学んだ
  • ClearPrint() を使って簡易表示を消去する方法を学んだ

3.5 基本的なデータ型

数値型

Siv3D で数値を扱うときは、次のような型を使います。一部は C++ 標準と同じ名前ですが、int32, uint64 のようにサイズが明示されている、Siv3D 独自の型もあります。

よく使う重要なものに ★ を付けています。

型名 説明
int8 符号付き 8-bit 整数型(-128 ~ 127)
uint8 符号無し 8-bit 整数型(0 ~ 255)
int16 符号付き 16-bit 整数型(-32,768 ~ 32,767)
uint16 符号無し 16-bit 整数型(0 ~ 65,535)
int32 ★ 符号付き 32-bit 整数型(-2,147,483,648 ~ 2,147,483,647)
uint32 符号無し 32-bit 整数型(0 ~ 4,294,967,295)
int64 符号付き 64-bit 整数型(-9,223,372,036,854,775,808 ~ 9,223,372,036,854,775,807)
uint64 符号無し 64-bit 整数型(0 ~ 18,446,744,073,709,551,615)
float 単精度浮動小数点数型
double ★ 倍精度浮動小数点数型
size_t ★ オブジェクトのサイズを表現する符号無し 64-bit 整数型(0 ~ 18,446,744,073,709,551,615)
# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	int32 score = 100;

	Print << score;

	score = 200;

	Print << score;

	score += 50;

	Print << score;

	while (System::Update())
	{

	}
}

真偽値型

プログラムで Yes / No のような二択の状態を表すときは、整数型ではなく、真偽値 bool 型の値を使ったほうがわかりやすいです。

bool 型は true または false の 2 つの値しか存在しません。true は真、false は偽を表します。

型名 説明
bool ★ ブーリアン型(false または true
# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	bool hasEnoughCoins = true; // false にしてみよう

	Print << hasEnoughCoins;

	if (hasEnoughCoins)
	{
		Print << U"コインが足りています";
	}
	else
	{
		Print << U"コインが足りません";
	}

	while (System::Update())
	{

	}
}

文字と文字列

Siv3D では、文字列を扱うときは String 型を使います。Stringchar32 型の配列をラップしたクラスで、UTF-32 でエンコードされた文字列を扱います。

Siv3D では C++ 標準ライブラリの std::string の代わりに、String 型を使うことが推奨されます。

型名 説明
char32 ★ UTF-32 の 1 要素(char32_t の別名)
String ★ 文字列クラス。要素は char32
StringView 文字列のビュークラス
FilePath ★ ファイルパス文字列(String の別名)
FilePathView ファイルパス文字列のビュー(StringView の別名)
# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	String s = U"Hello, Siv3D";

	Print << s;

	s += U"!";

	Print << s;

	// Siv3D を C++ に置き換える
	s.replace(U"Siv3D", U"C++");

	Print << s;

	while (System::Update())
	{

	}
}

配列などのデータ構造

一次元配列、二次元配列、ハッシュテーブル、オプショナルなど、Siv3D には C++ 標準ライブラリの代わりに使えるデータ構造が用意されています。C++ 標準ライブラリのものと比べて、便利な機能が追加されています。

型名 説明
Array<Type, Allocator> ★ 動的配列(C++ 標準ライブラリの std::vector の置き換え)
Grid<Type, Allocator> 動的な二次元配列
HashSet<Type, Hash, Eq, Alloc> ハッシュテーブルによる Set(C++ 標準ライブラリの std::unordered_set の置き換え)
HashTable<Key, Value, Hash, Eq, Alloc> ハッシュテーブルによる Map(C++ 標準ライブラリの std::unordered_map の置き換え)
Optional<Type> ★ 無効値を表現できる型(C++ 標準ライブラリの std::optional の置き換え)
std::array<Type, size_t> 固定長配列
# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Array<int32> coins;

	// 配列の末尾に新しい要素を追加する
	coins << 10;
	coins << 5;
	coins << 1;
	coins << 100;

	Print << coins;

	// 要素が昇順になるようソートする
	coins.sort();

	Print << coins;

	while (System::Update())
	{

	}
}

予習チェックリスト

  • Siv3D でよく使う型、bool, int32, double, size_t, char32, String, Array を学んだ

3.6 背景の色を変える

背景の色は Scene::SetBackground(色) で変更できます。
色の指定方法はさまざまな方法があります。

色の指定方法 説明
Palette::色名 Siv3D で定義されている色名を指定する。
Palette::White, Palette::Black, Palette::Skyblue など
ColorF{ 赤, 緑, 青 } 赤、緑、青成分を 0.0~1.0 の範囲で指定する
ColorF{ グレースケール } グレースケール値を 0.0~1.0 の範囲で指定する
HSV{ 色相, 彩度, 明度 } 色相を 0.0~360.0, 彩度、明度を 0.0~1.0 の範囲で指定する
HSV{ 色相 } 色相を 0.0~360.0 の範囲で指定する
ColorF{ U"#77FF00" } 16 進数で色を指定する
HSV 表色系における色相

図表は https://bootcamp.uxdesign.cc/hsb-hsv-color-system-d14697d7c485 より引用

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	// 背景を白色にする
	Scene::SetBackground(Palette::White);

	while (System::Update())
	{

	}
}

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	// 背景色を RGB で指定する
	Scene::SetBackground(ColorF{ 0.8, 0.9, 1.0 });

	while (System::Update())
	{

	}
}

予習チェックリスト

  • 背景色を指定するには Scene::SetBackground() を使うことを学んだ
  • Palette::*** で定義されている色を使うことができることを学んだ
  • 色を RGB で指定するには ColorF{ 赤, 緑, 青 } または ColorF{ グレースケール } を使うことを学んだ
  • 色を HSV で指定するには HSV{ 色相, 彩度, 明度 } または HSV{ 色相 } を使うことを学んだ

3.7 図形を描く

3.7.1 座標系

ウィンドウ内で、背景色を変えられる部分が 画面(シーン)です。Siv3D はこの領域に文字や図形、画像を表示できます。

画面のサイズは、基本の状態では幅 800 ピクセル高さ 600 ピクセルです。

画面上の位置を表す座標系は、最も左上のピクセルが「X 座標 0」「Y 座標 0」を表す (0, 0) です。右に進むと X 座標が大きくなり、下に進むと Y 座標が大きくなります。画面の最も右下のピクセルの座標は (799, 599) です。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update())
	{
		ClearPrint();

		// 現在のマウスカーソル座標を表示する
		Print << Cursor::Pos();
	}
}

このコードを実行すると、マウスカーソルの座標が画面の左上に簡易表示されます。

3.7.2 円を描く

Siv3D では、何かを描く命令はメインループの中に記述します。円を描くときは Circle を作成し、その .draw() を呼びます。CircleCircle{ x, y, r } のように、中心の X 座標、Y 座標、半径を指定して作成します。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update())
	{
		// 円を描く
		Circle{ 400, 300, 20 }.draw();
	}
}

Circle の構造

Circle は次のようなクラスです。

struct Circle
{
	double x;
	double y;
	double r;
};

Circle は、二次元座標を表す Point 型や Vec2 型の値を使って、Circle{ pos, r } のように、2 つの引数から作成することもできます。Cursor::Pos() は現在のマウスカーソルの座標を Point 型で返す関数なので、これを使ってマウスに追随する円を描くことができます。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update())
	{
		// マウスに追随する円を描く
		Circle{ Cursor::Pos(), 100 }.draw();
	}
}

Point や Vec2 の構造

PointVec2 は次のようなクラスです。

struct Point
{
	int32 x;
	int32 y;
};

struct Vec2
{
	double x;
	double y;
};

図形に色を付けたいときは .draw() 関数の引数に色を渡します。色を指定しなかった場合は白色になります。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update())
	{
		Circle{ 100, 200, 40 }.draw(); // 色を指定しない場合は白色

		Circle{ 200, 200, 40 }.draw(Palette::Green);

		Circle{ 300, 200, 40 }.draw(Palette::Skyblue);

		Circle{ 400, 200, 40 }.draw(ColorF{ 1.0, 0.8, 0.0 });

		Circle{ 500, 200, 40 }.draw(ColorF{ 0.8 });

		Circle{ 600, 200, 40 }.draw(HSV{ 160.0, 0.5, 1.0 });

		Circle{ 700, 200, 40 }.draw(HSV{ 160.0 });
	}
}

ColorFHSV は、不透明度を指定できます。不透明度は 0.0 から 1.0 の範囲で指定します。

0.0 は完全に透明、1.0 は完全に不透明で、0.5 のときは背景色と描画色が 50% ずつ混ざった色になります。

不透明度 a (アルファ)は、ColorF{ r, g, b, a }, ColorF{ gray, a }, HSV{ h, s, v, a }, HSV{ h, a } のように、最後の引数に指定します。

不透明度を指定しない場合は、デフォルトで 1.0 になります。

Scene::SetBackground() に指定する色については、不透明度は無視されるため無意味です。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update())
	{
		// 中央に白い円を描く
		Circle{ 400, 300, 200 }.draw();

		// 左に半透明の円を描く
		Circle{ 200, 300, 200 }.draw(ColorF{ 1.0, 0.0, 0.0, 0.9 });

		// 右に半透明の円を描く
		Circle{ 600, 300, 200 }.draw(HSV{ 240.0, 0.5, 1.0, 0.2 });

		// マウスカーソルの位置に半透明の円を描く
		Circle{ Cursor::Pos(), 100 }.draw(ColorF{ 0.0, 0.5 });
	}
}

3.7.3 長方形を描く

長方形を描くときは Rect を作成して .draw() します。

Rect{ x, y, w, h } は、左上座標が (x, y), 幅が w, 高さが h の長方形です。

Rect{ x, y, s } は引数を省略したオーバーロードで、左上座標が (x, y), 幅と高さが s の正方形です。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update())
	{
		// 長方形を描く 
		Rect{ 20, 40, 400, 100 }.draw();

		// 正方形を描く 
		Rect{ 100, 200, 80 }.draw(Palette::Orange);
	}
}

Rect の構造

Rect は次のようなクラスです。

struct Rect
{
	int32 x;
	int32 y;
	int32 w;
	int32 h;
};

座標や大きさを double 型で扱いたい場合は、Rect の代わりに RectF 使います。

Scene::Time() は、プログラム開始からの経過時間を秒 (double 型)で返します。

下記のコードでは、長方形の幅 w が毎秒 20.0 のペースで増えていきます。double 型である w に合わせるため、Rect ではなく RectF を使います。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update())
	{
		const double w = (Scene::Time() * 20.0);

		// 長方形を描く 
		RectF{ 20, 40, w, 100 }.draw();
	}
}

RectF の構造

RectF は次のようなクラスです。

struct Rect
{
	double x;
	double y;
	double w;
	double h;
};

3.7.4 円や長方形の枠を描く

円や長方形の枠だけを描きたい場合、.draw() の代わりに .drawFrame(innerThickness, outerThickness, color) を使います。

innerThickness は内側方向への太さ、outerThickness は外側方向への太さを表す double 型の値です。innerThicknessouterThickness には、それぞれ 0.0 以上の値を指定します。

color を省略した場合、.draw() と同様に白色で描画されます。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	while (System::Update())
	{
		// 長方形の枠を描く
		Rect{ 100, 100, 100, 30 }
			.drawFrame(3, 0);

		// 長方形の枠を描く
		Rect{ 220, 100, 100, 30 }
			.drawFrame(0, 3);

		// 長方形の枠を描く
		Rect{ 200, 200, 400, 100 }
			.drawFrame(3, 3, Palette::Orange);

		// 円の枠を描く
		Circle{ Cursor::Pos(), 40 }
			.drawFrame(1, 1, Palette::Seagreen);
	}
}

3.7.5 長方形のグラデーション

RectRectF.draw() する際、.draw(Arg::top = 色, Arg::bottom = 色) のように書くことで、上下方向のグラデーションで長方形を描画できます。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(ColorF{ 0.8, 0.9, 1.0 });

	while (System::Update())
	{
		// グラデーションで長方形を描く
		Rect{ 0, 0, 600, 500 }
			.draw(Arg::top = ColorF{ 0.5, 0.7, 0.9 }, Arg::bottom = ColorF{ 0.5, 0.9, 0.7 });
	}
}

.draw(Arg::left = 色, Arg::right = 色) のように書くことで、左右方向のグラデーションで長方形を描画できます。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(ColorF{ 0.8, 0.9, 1.0 });

	while (System::Update())
	{
		// グラデーションで長方形を描く
		Rect{ 0, 0, 600, 500 }
			.draw(Arg::left = ColorF{ 0.5, 0.7, 0.9 }, Arg::right = ColorF{ 0.5, 0.9, 0.7 });
	}
}

予習チェックリスト

  • 画面の座標系と基本の画面サイズ(800x600)を理解した
  • Circle を使って円を描画する方法を学んだ
  • 半透明の色の指定方法を学んだ
  • Rect または RectF を使って長方形を描画する方法を学んだ
  • 円や長方形の枠を描画する方法を学んだ
  • グラデーションの長方形を描画する方法を学んだ

3.8 模様を描く

for ループと図形描画を組み合わせると、模様やパターンを簡単に描くことができます。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(Palette::White);

	while (System::Update())
	{
		for (int32 i = 0; i < 5; ++i)
		{
			Circle{ (i * 100), 100, 30 }.draw(Palette::Skyblue);
		}

		for (int32 i = 0; i < 5; ++i)
		{
			Circle{ (50 + i * 100), 200, 30 }.draw(Palette::Seagreen);
		}
	}
}

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(Palette::White);

	while (System::Update())
	{
		for (int32 y = 0; y < 4; ++y) // 縦方向
		{
			for (int32 x = 0; x < 6; ++x) // 横方向
			{
				Circle{ (x * 100), (y * 100), 30 }.draw(Palette::Skyblue);
			}
		}
	}
}

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(Palette::White);

	while (System::Update())
	{
		for (int32 y = 0; y < 4; ++y)
		{
			for (int32 x = 0; x < 6; ++x)
			{
				if ((x + y) % 2 == 0)
				{
					Circle{ (x * 100), (y * 100), 10 }.draw(Palette::Skyblue);
				}
				else
				{
					Circle{ (x * 100), (y * 100), 30 }.draw(Palette::Skyblue);
				}
			}
		}
	}
}

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(Palette::White);

	while (System::Update())
	{
		for (int32 x = 0; x < 6; ++x)
		{
			Rect{ (x * 100), 0, 80, 600 }.draw(ColorF{ 0.0, (x * 0.2), 1.0 });
		}
	}
}

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(Palette::White);

	while (System::Update())
	{
		for (int32 x = 0; x < 10; ++x)
		{
			Rect{ (x * 80), 0, 80, 600 }.draw(HSV{ (x * 36), 0.5, 1.0 });
		}
	}
}

予習チェックリスト

  • ループと図形描画を組み合わせて模様を描画する方法を学んだ

3.9 絵文字を描く

Siv3D には画像素材として、3000 種類以上の絵文字が用意されています。プログラムで絵文字を自由な場所に描くには、絵文字からテクスチャ(Texture クラス)を作成し、そのメンバ関数 .drawAt() を使います。

3.9.1 絵文字を描く

まず、Texture 変数名{ U"絵文字"_emoji }; で絵文字のテクスチャを作成します。テクスチャの作成はコストがかかるため、メインループ while (System::Upodate()) よりも前で行います。

作成したテクスチャを画面に表示するには、.drawAt(x, y) または .drawAt(pos) を使います。指定した座標を中心として絵文字が描かれます。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(ColorF{ 0.8, 0.9, 1.0 });

	const Texture emoji1{ U"🐈"_emoji };

	const Texture emoji2{ U"🍎"_emoji };

	while (System::Update())
	{
		emoji1.drawAt(100, 100);

		emoji2.drawAt(200, 300);

		emoji1.drawAt(400, 300);

		emoji2.drawAt(Cursor::Pos());
	}
}

絵文字を探す

  • 絵文字の種類は emojipedia で探すと便利です。全部で 3700 種類以上が用意されています。
  • Windows の場合は、Win+. で出てくる、OS 標準の絵文字入力メニューも使えます。

3.9.2 絵文字の大きさを変える

デフォルトの絵文字の大きさは余白(透明部分)も含めて 136x128 ピクセルです。.drawAt(x, y) の前に .scaled(s) を挟むことで、テクスチャが s 倍拡大縮小されます。

例えば、0.5 を指定すると、絵文字の大きさが 136x128 の半分の 68x64 で描かれます。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(ColorF{ 0.8, 0.9, 1.0 });

	const Texture emoji1{ U"🐈"_emoji };

	const Texture emoji2{ U"🍎"_emoji };

	while (System::Update())
	{
		emoji1.scaled(0.6).drawAt(100, 100);

		emoji2.scaled(0.3).drawAt(200, 300);

		emoji1.drawAt(400, 300);
	}
}

3.9.3 絵文字を回転させる

.drawAt(x, y) の前に .rotated(angle) を挟むと、テクスチャが時計回りに angle 度回転します。angle は 1 周 360° を 2π とするラジアンで指定します。45_deg, 90_deg のように _deg を付けて表記すれば、度数法の角度をラジアンに変換してくれます。

_deg 記法 ラジアン
0_deg 0.0
45_deg 0.78539816339
90_deg 1.57079632679
180_deg 3.14159265359
360_deg 6.28318530718

例えば、10_deg を指定すると、絵文字が時計回りに 10 度回転します。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(ColorF{ 0.8, 0.9, 1.0 });

	const Texture emoji1{ U"🐈"_emoji };

	const Texture emoji2{ U"🍎"_emoji };

	while (System::Update())
	{
		emoji1.rotated(10_deg).drawAt(100, 100);

		emoji2.rotated(180_deg).drawAt(200, 300);

		emoji1.rotated(45_deg).drawAt(400, 300);
	}
}

3.9.4 絵文字を左右反転する

.drawAt(x, y) の前に .mirrored(mirror) を挟むと、mirrortrue のときにテクスチャが左右反転されます。false の場合は元の向きが使われます。

次のコードは、マウスカーソルの X 座標を Cursor::Pos().x によって取得し、マウスカーソルが絵文字の右側にある場合、絵文字を左右反転して(猫を右に向けて)描画するサンプルです。

# include <Siv3D.hpp>

void Main()
{
	Scene::SetBackground(ColorF{ 0.8, 0.9, 1.0 });

	const Texture emoji1{ U"🐈"_emoji };

	while (System::Update())
	{
		const int32 cursorX = Cursor::Pos().x;

		emoji1.mirrored(400 <= cursorX).drawAt(400, 300);
	}
}

予習チェックリスト

  • 絵文字からテクスチャを作成する方法を学んだ
  • テクスチャの作成はコストがかかるため、メインループの前で行うことを学んだ
  • テクスチャを .drawAt(x, y), .drawAt(pos) を使って指定した場所に描く方法を学んだ
  • テクスチャを .scaled(s) を使って拡大縮小する方法を学んだ
  • テクスチャを .rotated(angle) を使って回転させる方法を学んだ
  • 度数法をラジアンに変換する _deg を使う方法を学んだ
  • テクスチャを .mirrored(mirrored) を使って左右反転させる方法を学んだ

3.10 ここまでの復習

ここまで学んだことを使って、プログラムを作ってみましょう。